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【社長秘書におすすめの本】『参謀の思考法』要約

この本は、以下のような人におすすめ!
・会社で社長秘書を担当している人
・トップに信頼されるビジネスパーソンになりたい人
・「参謀」とは何か?に興味がある人

 

たぬきち
たぬきち
会社で社長秘書を担当しているみなさん、社長秘書ってどうあるべき存在なのか?悩んだりしてませんか?
今回はそんな悩みを解決する本『参謀の思考法』をレビューしています!

社長秘書を担当している人って、そんなに多くはいないと思うんです。しかも、基本は日の当たらない存在なので、ポジションとして不透明な部分も多い。

だから、社長秘書って本来どうあるべきなのか?って、結構難しいテーマだと思うんです。

かくいう僕も、少し前まで、社長直属の組織に所属していたため、肩書としては社長秘書でした。しかし、一般的にイメージされる、社長のスケジュールを管理したり、身の回りのお世話をしたりするような秘書ではなく、社長直属のスタッフとして、特命の任務にあたる秘書です。抽象的な言い方をすれば、「社長補佐スタッフ」といったところでしょうか。

多くの方にとっては、それってどんな仕事なの?と疑問に思うかもしれません。以下が、実際に僕が社長秘書として行っていた仕事です。

・社長のスピーチ原稿を書く
・社長のプレゼン資料を作成する
・視察等に同行する
・社長と従業員のコミュニケーションの機会とセッティングする
・特命案件を担当する

社長の一番の仕事は、意思決定です。多くの社長は、とても忙しい日々を送っています。会社のトップとして、次々と意思決定をしなければなりません。また、様々な人と会って、コミュニケーションをとるのも重要な仕事です。

つまり、スピーチ原稿やプレゼン資料を作成したり、意思決定に必要なデータを集めたり、社員とのコミュニケーションの場をセッティングしたりという、いわゆる“実務”をしている暇はありません。

なので、社長の“実務”をサポートするスタッフが必要です。それが社長秘書です。

このポジションになったときは、正直かなり戸惑いました。社長というのは、会社の役職的にも年齢的にも、遥か上の存在です。「まだまだ若手の僕なんかが、どのような役割を果たせばいいのだろう…?」とかなり悩みました。

「悩みました」というか、今も悩み続けています。今は、当時の部署からは異動して、広報の仕事をメインに行っているのですが、「社長のスピーチ原稿を書く」「社長のプレゼン資料を作成する」という仕事は継続して担当しています。

なので、「社長秘書」ではなくなりましたが、半分は「社長補佐スタッフ」です。

仕事の内容としてはかなり慣れてはきたものの、自分がどれだけ社長に価値を提供できているかというと、あまり自信はありません。

当時このポジションになったとき、いくつかそれっぽいビジネス書を読んでみましたが、それらの本でよく出てきたワードが「参謀」でした。

「参謀」といえば、“戦略や作戦を練る切れ者”というイメージです。なんかかっこよさそうですよね。そんなかっこいいイメージに惹かれ、なんとなく僕は「参謀」的な存在になりたいという漠然とした目標を掲げ、これまで仕事を続けてきました。

今年でその「参謀」的ポジションは3年目になります。ビジネスの世界で3年は、ひとつ区切りの瞬間だと思います。そんな区切りのタイミングを前に、今一度自分の果たすべき本当の役割を学びなおしたくて、読んでみたのが、今回紹介したい本です。

内容的には、すべてのビジネスパーソンにおすすめできるものかと言うとそうではないです。あくまで「社長秘書」の仕事に焦点を当てているので、それ以外の仕事をされている方々にとっては、この本で得たことを、現業に活かすのは少し難しいかもしれません。

しかし逆に言うと、僕のような「社長秘書」をやっている人からすれば、めちゃくちゃ共感できると思います。

そしてそれと同時に、まだまだ自分は甘いと思い知らされると思います。

それだけ「社長秘書」として、「参謀」として、学びが多い本です。

前置きが長くなりましたが、それでは、本の紹介に移っていきます。

作品概要


『参謀の思考法 ートップに信頼されるプロフェッショナルの条件』
発行所:ダイヤモンド社
著者:荒川詔四
発売日:2020年6月

『参謀の思考法』要約

参謀に必要な22の思考法を記した本

本書の著者、荒川詔四さんは、世界最大のタイヤメーカー㈱ブリジストンの元CEO。

荒川さんが40代で現場の課長職についていたころ、突如、社長直属の秘書課長に任命されます。そして、社長の「参謀役」として、その実務を全面的にサポートする日々を送ることになります。その後、タイ現地法人社長、ヨーロッパ現地法人社長を経て、本社社長に就任。

そんな荒川さんが、社長秘書として「参謀役」を担っていたときの経験と、自分自身がCEOとして「参謀役」の部下と接してきた経験から、トップに信頼されるプロフェッショナルの条件として、参謀に必要な22の思考法を記した本です。

以下が、本書の章立てです。

第1章 上司は「機関」と考える
1 従順であることは「美徳」ではない。
2 リーダーの「先」を行くのが参謀である。
3 上司を「人」ではなく、「機関」と考える。
4 一流の「カバン持ち」であれ。

第2章 すべては「合目的的」に考える
5 上司とは異なる「自律性」を堅持する。
6 「自己顕示」は非知性的な言動である。
7 「トラブル」は順調に起きる。
8 上司を守ろうとして貶める「愚者」になるな。

第3章 「理論」より「現実」に学ぶ
9 本で学んだ「知識」は危険である。
10 「理論家」に優れた参謀はいない。
11 議論で「勝つ」という思考を捨てる。
12 自分を俯瞰する「視点」を常にもつ。
13 参謀は「1円」も稼いでいない。
14 コンサルタントはあくまで「使う」ものである。

第4章 「原理原則」を思考の軸とする
15 トップと「ビジョン」を共有する。
16 仲間と力を合わせる「楽しさ」を知る。
17 参謀は常に「自分の言葉」で語る。
18 「原理原則」を思考の軸とする。
19 「制約」こそが思考の源である。

第5章 人間関係を「達観」する
20 「人間関係は悪いのが普通」と達観する。
21 参謀が死守すべき「中立性」とは何か?
22 結局、自然体で「仕事」を楽しむ人が強い。

3つの思考法

本当は22の思考法をすべて紹介したいくらいの気持ちなのですが、さすがにそれではただのネタバレになってしまうので、実際に僕が読んでみて、特に学びになったと思えた思考法を3つだけピックアップして、持論を踏まえつつ、ご紹介させていただきます。

①リーダーの「先」を行くのが参謀である。

先頭に立つリーダーを「黒子」になって支えるのが参謀の役割ですが、ここで注意しなければならないのは、先頭に立つのはリーダーだからといって、参謀は、その後ろをついていけばいいわけではないということです。

あるべき姿は、むしろ逆で、リーダーの「先回り」をしなければ、真の参謀の役割は果たせません。リーダーの進む方向を見極めて、リーダーが最速で進めるように、「先回り」して準備する。まさに歌舞伎の「黒子」のように動くのが参謀の仕事だということです。

しかし、「先回り」というのは、言うは易く行うは難しです。社長の進む方向を見極めるためには、社長とビジョンを共有していなければなりません。また、会社のあらゆることについて、社長と同等の情報量を持っておかなければなりません。

本書では、これを「リーダーの脳と自分の脳を同期させる」と表現しています。

著者の荒川さんは、社長直属の秘書課長なので、社長に上がってくる決裁文書は、一旦すべて自分のもとに届きます。それらすべてに隈なく目を通し、不明点や不足点があれば、担当部署に足を運んで情報を聞き出す。そうやって、社長が意思決定できるだけの情報を決済文書に補充した上で、社長に上げたそうです。

ところが、万全を期したつもりでも、決済文書が突き戻されることがある。その突き戻された文書には、「△」や「?」のマークが付されており、それを逐一チェックしていくプロセスを繰り返したということです。

これにより、「社長が意思決定するために必要な情報は何か?」「社長はどういう観点で意思決定をしているか?」といったことが少しずつ把握できるようになっていくと。

これこそが、「リーダーの脳と自分の脳を同期させる」ということだそうです。

僕自身、社長に「お前の役目は露払いをすることだ」と言われたことがあります。

リーダーの後ろに付き従うフォロワーではなく、リーダーの先回りをして、社長が的確な意思決定を迅速に下せるように準備することが、参謀の果たす役割だということです。

②「理論家」に優れた参謀はいない。

著者は「理論家に優れた参謀はいない。そもそも理論家で仕事ができる人を見たことがない。」と言っています。

これは単に、理論を軽視しているものではありません。過去の事象を徹底的に検証して構築した理論は、現実に起きている現象を読み解くうえで、貴重なヒントを与えてくれます。

しかし、ビジネスの現場というのは、常に個別性をもっていて、一般化した理論からはみ出す部分というのは必ずあります。よって、100%理論通りに動くことなどはあり得ないから、現実を直視せずに理論に当てはめて考えてしまうと、誤った打ち手を実施してしまうことは往々にしてある。それが非常に危ういということです。

すべての答えは現場に落ちている。現場で起きていることを丁寧に観察して、現場のメンバーの声に耳を傾ければ、必ず「解決策」や「改善策」は見えてきます。

社長の脳と同期されていながらも、現場の状況も細かく把握しているという状態が、頼れる参謀のあるべき姿ということです。

実際僕も、(これは社長ではなく副社長に言われたことですが)「答えは現場にしかない。とにかく現場に足を運べ」と言われたことがあります。

常にパソコンに齧りついて、まさにデスクだけで仕事をしている僕に対して、「それでは正しい打ち手を見つけ出すことはできない」と警鐘を鳴らしてくださったのだと、今なら理解できます。

③参謀は常に「自分の言葉」で語る。

当然ながら、参謀に意思決定権限はありません。あくまでも、意思決定者であるリーダーや上司をサポートするのが、参謀の役割です。

そして参謀は、リーダーの「意思」を実現するべく、社内外とコミュニケーションを取る役割を担います。ここに重要なポイントがあります。

参謀は、リーダーと脳を同期させる必要がありますが、あくまでそのリーダーとは「別人格」の存在です。そのため、リーダーの「意思」を伝達する“メッセンジャー・ボーイ”になってしまう恐れがあります。しかし、ただの“メッセンジャー・ボーイ”になってしまっては、参謀として存在している意味がなくなってしまうのです。

本書では、“メッセンジャー・ボーイ”になってはいけないという話を、著者が社長と副社長の板挟みにあったエピソードを交えながら解説しています。

参謀は、リーダーの立場に立って、リーダーの意思を実現させるために、コミュニケーション相手の理解を得る必要があります。もしそこで相手の理解が得られないからといって、相手の言い分をそのまま持ち帰り、社長にそのまま伝達するようであれば、それはただの“子どものつかい”にすぎません。

仮に、その相手が上層部だとしても、社長の「意思」を「自分の言葉」で語り、対等の議論をしなければならないということです。

ただの「意思」の伝言になってしまうと、そこには熱量がないため納得感がありません。よって、相手を説得することは難しくなります。

社長の「意思」を、自分自身が腹の底から納得した状態にして、その「意思」を「自分の言葉」で語る。

これが、参謀としての重要な役割の1つだということです。

実は、本書を読んでいて、僕が一番共感したポイントがここです。社長秘書をやるにあたり、一番悩んでいたのが、社長と他の役員の板挟みになってしまうことでした。

社長の「意思」が他の役員の考えと合致せず、板挟みになりながら、ただの“メッセンジャー・ボーイ”になった経験は、何回もあります。その度に「なんで僕がこんなことしなきゃいけないんだ…」と思っていました。

しかし思い返してみると、そういった局面にならずにうまくことが進んでいたときというのは必ず、僕自身が社長の「意思」に納得していて、自信をもって、役員相手にそれを語っていたときでした。

つまり、自分自身が社長の意思を腹落ちさせるために、まずは徹底的に社長と対峙する必要があるということです。

会社のトップである社長に対し、何か意見したり、時には反対して止めるというのは、非常に難しいことです。

しかしそれは、社長の近くにいる参謀だからこそできることであり、とても重要な役割であるということです。

ビジネスマンとして本質は一緒

この本、とても面白かったです。それは、僕にとって、共感できる部分がたくさんあったから。もちろん、僕自身は著者ほど高度なことはしてないですし、スケール感もまるで違います。

ですが、本質は一緒だと思いました。だからこそ、学びになったし、今後「参謀」として、きっと役に立つだろうと思いました。

本書でも語られていますが、参謀というのは「1円」も稼いでいません。利益は生み出さないのに、それでも給料をもらっています。

「自分は1円も稼いではいない」ということをしっかり心得て、その上で、自分はどんな価値を生み出せているだろうかと見つめ直す必要があると、この本を読んで痛感しました。

本書に載っている思考法は、どれも実行するのは簡単なことではありません。だからこそ、これらをきちんと実行できたとき、はじめて真の参謀として、トップに信頼されるようなプロフェッショナルになれるのだと思います。

最後に、改めてですが、この本は以下のような人におすすめです。
・会社で社長秘書を担当している人
・トップに信頼されるビジネスパーソンになりたい人
・「参謀」とは何か?に興味がある人

気になったらぜひ読んでみてください。